バラエティーコーナーの角台より

消えゆくモノの美学

手を振る君に背を向けて

 

 

文字通り愛煙家が煙たがられる世情に合わせ

ホール内での喫煙が不可となった。

「いい潮時か。」

禁煙化の開始を前にしてホールを去ることを決めた。

いや、決める一因となっただけか。

去ろうと決意した理由は他にもあった。

とある日、仕事帰りにホールに立ち寄り

そして気が付いたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホールに足を運ぶ理由は二つだった。

副収入減として、そして考え事にふける為。

仕事やプライベートにおける問題、

これから先の人生について、

とにかく考え事をしたい時は決まって

陽気な道化師と戯れることとしていた。

 

 

 

 

その日もストレスフルな職場から

足早に逃げ出し、

帰宅路にあるホールに立ち寄った。

腰を下ろしたのは勿論、I'm Juggler.

 

 

 

入口にして出口でもある名機、

言い換えれば国民的スロット機。

釣りで言ったら鮒釣りみたいなものだ。

シンプル故に奥が深い。

 

 

 

 

1本目のタバコに火を付け

こなれた手つきでコインを投入する。

レバーを叩き、リールが回転する。

0.8秒のリズムに合わせ

思考が脳内を回り始める。

 

 

 

 

コインと投入し、レバーを叩き、

停止ボタンを止める。

延々と同じ動作の繰り返し。

そこに意識が介在することはない。

自動化された行為故に、

雑念が入ることなくクリアな脳状態で

考え事に耽ること可能となる。

 

 

 

 

 「来週の会議の準備、間に合うのか?」

「部下の指導はどうしたものか?」

「親を看取ったらこの町を出たいな。」

「I'm Juggler.」直訳すれば「俺はジャグラー

吉本とコラボして

「俺やで、俺。」原西さんパネルでも

地域限定パネルで作ればいいのに。

 

 

 

そんな仕事のことや下らないことを

考えながらプレイを続けていた。

 

 

 

思考の旅が休息し、ふと我に返ると

ビックボーナスを消化中である

自分に気が付いた。

 

 

 

一番高揚感を感じるはずの

ボーナス当選ですら意識外の行為にて

一枚がけで7を揃え消化している。 

 

 

 

思えばいつの頃からだったろうか?

スロットに対してこんな冷めた姿勢で

臨むようになったのは。

始めた当初は1G毎に高揚感を感じながら

レバーを夢中で叩いてはずなのに。

 

  

 

今ではどんな感情も生まれることなく、

淡々と作業をこなすかの如く

一連の動作を繰り返すだけ。

 

 

文字通りおざなりなプレイ

アンニュイ・ラスナイ、わがままジュリエット

 

 

そしてようやく気が付いた。

「ああ、もう愛は冷めてしまったんだ」と。

 

 

 

 

ボーナスを消化し清算ボタンを押す。

吐き出されるコインの落下音と共に

何か憑き物が落ちたかのように感じた。

 

 

 

ゆっくりと席を立ち、最後に筐体を一瞥する。

下パネルの道化師は

いつもと変わらぬ手を振っている。

 

 

 

「さよなら。」と言っていたのか

「またね。」と耳の奥に届いたのか、

それは今もわからないままけれど、

僕は長年通ったホールを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これはどこにでもある私的な回顧録

思い出と想いが尽きるその時まで

綴ることとする。

多分、意外と早く尽きると思うけど。

10回くらいは書けるか?それまでの間、

開店前の暇つぶしにでもなれば幸いだ。

 

 

 

 

 

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