バラエティーコーナーの角台より

消えゆくモノの美学

待っているのも悪くはなかった

 

 

 

あれだけ暑すぎだなんだと好き勝手に
文句を垂れていたのに随分と調子のいいものだ。
曇天の日々が続く今日この頃、
熱い夏を心待ちにしている自分がいる。

 

 

「何か素敵なことが起きるのではないか?」
そんな根拠の無い淡い期待を連れてくる。
うだる様な気温を差し引いても
夏が演出する高揚感は何物にも代え難い。

 

 

刺すような日差し、青い空。
蝉の声に高揚感を覚え、
風鈴の音に安らぎを感じ、
打ちあがる花火に想いを馳せる。

 

 

そんな訳でとある夏の日に
通いなれたホールにて花火を打っていた。
今回は花火にまつわる無駄話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

疎らな客付きのボッタ店、
そこはかとない寂寥感が祭りの後を想起させる。
去りし日の思い出に耽るにはこんな店が最適だ。

 


台選びに迷うことは無い、
なせならベタピン確定のボッタ店。
座り心地の良さそうな椅子に腰を降ろす。
花火のコーナーには僕以外客はいない。
穏やかな気持ちにてレバーを叩き始める、

 


打ち方はオーソドックスな左上段暖簾狙い。
挟んで中で氷をフォロー。
基本はダブテン外れ待ち、
半ば脳死状態にて淡々と打ち続ける。

 


半分死んでる脳の片隅にて
夏の思い出のスライド上映が始まる。
青春時代の花火大会、
駅前のベンチにて君を待っていた。
もしかしたら浴衣で来るのかな?
そんな妄想に浮かれながら。

 

 

 

 

 

 

 


・・・・・・それにしても当たらん。
延々出続ける通常出目に辟易していた。
それも其の筈、まごうことなき設定1。
そもそも小役すら碌に落ちない、
つまりはダブテンする頻度も低く、
期待感を抱くことすら許されない状況。

 


単調な作業感漂うプレイングの中、
唯一残された楽しみは「遅れ」だけだ。


「左で一発で決めちまうか?」
「いや、消灯と出目の絡みを楽しもう、右!」


どこから何処を狙うか?
意思が介入出来る数少ない場面。
この時ばかりは冷めた中年が
少年のように目を輝かせる瞬間だ。

 

 

当選期待度約20%というバランスも良い。
基本は外れるが当たらない訳ではない。
「もしかしたら」という希望、
外れであったとしても期待感を楽しむ、
それこそが遅れの醍醐味なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日もそうだった。
待ち合わせ時間を過ぎても
一向にくる気配の無い彼女。
携帯電話がまだ普及しきる前のこと、
イムリーに状況を尋ねることすら出来なかった。

 


遅れを待つことは楽しかった。
「もしかしたら来ないんじゃないか?」
そんな不安を抱きながらも
人混みを掻き分け、息を切らせ小走りにやってくる
君の姿を期待しながら待っている時間は悪くなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「テロ~ン!」


迷うことなく左リールを止める。
遅れの音がラインの着信音と重なる。


「ゴメン、急用入ったの。」


現代の僕らは
遅れに希望が持てない時間を過ごしている。
利便性と引き換えに失ったのは
淡い期待感を楽しむ時間。

 

左リール上段には初夏の果実が鎮座していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

遅れすら来ない設定1の毎日が続く中、
あの夏、一人見上げた夜空を想う。
滲んで揺れる三尺玉が夜空に消えていった夏を。

 

 

 

 

 

 

 

 

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